美術品やジュエリー、骨董品のようにコレクターズアイテムになってしまったのだろうか、日本では常設のオークションにブランド品がでるようになっている。ふつうオークションと聞くと、秘蔵の絵画とか、誰それ愛用のジュエリーといった珍品ばかり。しかも、コレクターたちがどんどん値をつり上げていくものと考えがちだが、日本初の常設オークション「東京オークションハウス」で競られるのは、食器や時計といった小物も多い。もちろん、ブランドのバッグなどもある。このオークションに参加制限はなく、費用も無料。プロの中古ショップ経営者などもやってくるから、彼らがここで于に入れたものに儲けを上乗せして売っていることを考えれば、かなりのお買い得価格で手に入ることは間違いない。ものによっては、一般価格の3分の1ということもあるらしい。あらかじめ品物をチェックできる下見会もあり、キズのあるなしや指輪のサイズなどは、たしかめることができる。
現実の社交界においても小説世界においても、強烈で濃密なオーラを放っていたダンディズムであったが、この時代のダンディズムに基づいた服装哲学がわたしたちの時代に遺したものは何だったのだろう?そのやたらうるさい服装のきまりやうんちく。とりあえず黒いスーツに包まれれば、なんとなく身分や階級の差など地ならしされてしまうような安堵感もあるが、それこそがダンディズムのしかけた罠である。スーツのディテールや素材、待ち物、そして着こなしのマナーに重要な差異が生まれてしまった。シャツ専門、パイプ専門、傘専門、といった「紳士の小道具」専門店が生まれ、ジェントルマンにふさわしい」マナーや着こなしの本が書店にあふれている。帽子の着脱のタイミングはいつか、手袋はどう持つのが正しくていつはずすのか、「ブラック・タイ指定」と「ホワイト・タイ指定」はどうちがうのか、ファンシー・タキシードはいつ着てよいのか、それぞれにふさわしい小物をどうそろえるか、などなど挙げつくしたらキリがないが、とにかく男性のファッションは、「お勉強」せねばならない「きまり」ごとでいっぱいである。
ブレザーの話が出たので、参考までにまた映画の話を少しする。ブレザージャケットがしばしば登場した映画は、ジェイムスーボンドでおなじみの007シリーズだ。映画そのものがカジュアルだったので、カジュアルなブレザーがぴったりはまっていた。英国諜報員らしく、歴代の007全員が紺ブレに金ぴかボタンである。シングルの紺ブレがいちばん似合ったのは初代のショーンーコネリー、いや、今やサー・ショーン・コネリーだ(2000年7月5日、スコットランドのエディンバラ宮殿で、エリザベス女王から「ナイト」の爵位を授与された)。ショーンーコネリーのフロントボタンは2つ、袖口は4つだ。ブルーのシャツに紺のシルクの手編みのタイをコーディネイトしている。パンツは濃いめのグレイだ。パンツの濃淡も、カジュアルの表現のための大切なファクターである。彼が濃いパンツをはいたシーンは、上司のMに会いに行くシーンだ。ジャケットスタイルのときは、薄ければ薄いほどカジュアル性が増す。この人は、スーツスタイルでも、ブレザースタイルでも、ネクタイは無地が多い。これは参考にしてほしい。無地のタイは、余分な色彩が入らない分、全体をすっきりまとめやすい。ネクタイを無地にした代わりに、彼はネクタイ素材にシルクをあしらった。しかも手編みである。ブレザーには、普通コーディネイトしない素材だ。これをカジュアルという。